学生による早稲田のスポーツ応援プロジェクト「ワセダウィルウィン」は終了しました。過去のサイトはアーカイブとして公開しています
アーカイブ(PC用サイト)神原
ポスト平成の展望でいうと、今年3月、正式に発足した日本版NCAA「UNIVAS(ユニバス)(※)」。ここに早稲田のスポーツがどう関わってくるかっていうことも大きなテーマですね。
友添
ひとつには、大学スポーツというのは治外法権で、大学執行部は関知してこなかった。それはいい言い方をすると課外活動だから。悪い言い方をすると、お金もかかるし厄介なことだし面倒だから、OB会が勝手にやってくれ的に治外法権の時代が長らく続いたんです。ところが、学生に怪我が起きたときに傷害保険すら手配できていない状況で何か起きたらどうするんだ!? といった話も出てきた。あるいは、監督によるパワハラ問題やガバナンスの問題が起こっても、大学側は「知りませんでした」で済まされるのか、という問題も考える必要が出てきました。
神原
大学スポーツの問題は、去年いくつも噴出しました。
友添
そういった側面と、もうひとつは大学スポーツが「コストセンター」(費用だけかかる部門)のままでいいのか? と。つまり、一般学生から集めてきたお金を選手の強化費や活動費に充てているにも関わらず、自前で何も稼いでないような大学スポーツの在り方が問われる時代になったということかもしれません。例えば、強化費や活動費には、早慶戦を見に行く余裕のない苦学生の学費だって含まれているわけです。そう考えれば、むしろ自前で自己財源を作れるような組織になっていく努力が必要なのではないか? これは早稲田だけの問題ではなく、我が国の大学スポーツ全体で共通して言えることで、「コストセンター」から「プロフィットセンター」(利益を生む部門)に変わるような仕組みを作っていかなければいけないわけです。
神原
だからこその「UNIVAS」です、と。
友添
ただまあ、そのなかには、スポーツ市場を拡大したり、あるいはスポーツの産業規模や雇用を伸ばそうという「大学スポーツの産業化」という思惑も実は入ってきている部分もあるんですよね。だから、悲喜こもごもというか、いろんな思い、欲求がまぜこぜになっている状態とも言えるんです。
ただし、私としてはやはり、学業の充実をしっかりとやらなきゃいけない、という考えは根底にあります。アメリカのNCAAのなかで、ある大学の研究者が一流チームのバスケットボール部員の学力を調べてみたところ、大学生であるにも関わらず、小学校4年生程度の読み書きしかできなかったという報告もあります。日本は、そこまでひどくはないと思うんだけど、大学の学業に困難を感じている選手や部員も少なくない。ならば、こういう人たちがちゃんと勉強できる環境と組織が必要だろうと思います。
神原
それが早稲田の場合は、平成15年(2003)に設置された「競技スポーツセンター」であり、「早稲田アスリートプログラム」が果たす役割なんですね。
木村
一方でね、僕なんかは「なぜ参考にするのがアメリカのNCAAなのか」と思うんですよね。つまり、「プロフィットセンター」を目指すとなると、学生・大学としての本分を失念してしまうことにならないか? 実際、そういう議論は本場・アメリカでも出ているわけですから。それに、国の規模でいけば、イギリスの大学スポーツだって参考になるはずだし、あちらの国では成長産業化なんて話は聞かないんですよね。
友添
「UNIVAS」設立に向けての話し合いの過程でも、私のように学業や、選手の安心安全を確保する議論が先と考える人もいれば、そうでない人もいて、さまざまな議論がありました。ただ、利益を出そうという部分に関していえば、必ずしも「UNIVAS」でやらなきゃいけないものでもないと思うんです。早稲田であれば、たとえば「記念会堂」の場所に「早稲田アリーナ」が完成した今、「大相撲・早稲田巡業」をやろう、という考えがあってもいいわけです。
友添
相撲協会にとっても、地域住民の皆さんにとっても、学生の中で新しい相撲ファンを生むという意味でも、いい話だと思うし、定例化していけば、チケットの売上げだけでもかなりの額が見込めるはず。問題点としては、準備期間も含めて数日間、部の練習ができない、という点はあります。しかし、最初から部の年間計画に組み込むような形でうまく対応できなくもないようにも思うんです。
神原
それ、面白いですね。青山学院大学も、体育館「青山学院記念館」をバスケットボールのBリーグ「サンロッカーズ渋谷」のホームアリーナとして貸し出していますからね。
木村
そうなんです。「UNIVAS」じゃなくたってできることもある、という点はしっかり議論していきたいですね。